■会社の決算期でばたついている最中、斜め後ろのデスクのAさんがお昼も食べずに働いていたので「身体こわしますよ、なんか買ってきますか?」と声をかけたら「大丈夫、私今ラマダンだから」と切り返された。すごいな、それ。修行の身となって仕事をする意気込みか。
それは冗談としても、バッサバサと仕事をこなすAさんの仕事っぷりはいつも鮮やかで、タフな彼女はいつ見てもとてもかっこいい。しかしそのストレスがたたり、キレのテンションで夜ドカ喰いをするので昼を差し引いても太ると嘆いていた。イスラムの神様、はやくAさんに平穏な日々を与えてください。

■そしてまた隣の席のOさんが昨日付けで退社された。今月辞めて来月はもう受験だという。30過ぎての夢はなかなか過酷な現実が伴うようだと人ごとながらに気を負ってしまう。
会社からはきれいなカラーの花束を贈られ皆から激励と共にひとしきり送り出されたOさんだったが、その後もいつまでたってもちっとも片付かないデスクに向かってせっせと格闘していた。見かねて「Oさん…それは徹夜になりませんか?」と尋ねると「大丈夫、大丈夫!」とさわやかに返されたのでひとまず仕事に戻る。しかし30分後、もう一度私の元へやって来て「ねえ、『そして僕は、途方に暮れる』って歌を知ってる?」と遠い目をして言い放った。だめだ、この人行く先を見失っている。
ちなみにあれは恋愛における別れの歌だったと思うが、

テーブルの上もそのままに ひとつのこらず君を 
悲しませないものを 君の世界のすべてにすればいい

の箇所を切り取ってOさんに贈りたい気持ちでいっぱいだ。
その後、Oさんが何時に帰られたかは知らないが、無事に帰れたことを願う。けれど月曜になってまだ片付けていたらおもしろいとも少し思う。
冗談です。これから立ち向かう勇気ある決断を陰ながらこっそり応援しています。6年間おつかれさまでした。